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2016年8月30日第1回 九州旅客鉄道株式会社

JR東日本やJR西日本も計画
クルーズトレインブームが到来

 「ななつ星 in 九州をもう1編成作れますか」という質問に、仲氏は「むずかしいでしょうね」と答える。「ななつ星 in 九州」は、プロジェクト実現にかかる費用はさておき、腕自慢の職人や車両メーカーの社員をはじめ、プロジェクトに関わったすべてのスタッフがプライドをかけて心意気で実現したものだ。単純に事業の損益で考えられるものではないという。
 試運転の時にはこんなこともあった。車内デザインを優先したために、乗客へのサービスに不具合が生じる可能性があった。オペレーションを担当する仲氏は、「これではまずい」と、内装のレイアウトを変更してもらうよう、唐池社長に訴えた。しかし唐池社長は水戸岡氏のデザインを尊重し、変更に応じない。そこで仲氏は唐池社長と激論を交わしたという。最終的には唐池社長が折れてくれ、水戸岡氏を密かに説得してくれたそうだ。仲氏はこの一件を振り返りながら「今でも試行錯誤が続いています。運行を開始してから3年目になりますが、現場からは、こうした方がいいという改善点が今でもあがってきます」と話す。
 「ななつ星で旅行をされたお客様からは、たくさんのお手紙をいただきます。その多くにクルーへの感謝が込められています。クルーの名前を覚えておいていただけるのは、行き届いたサービスがお客様に満足していただいていることの証だと思います」と話す。それが高額なツアーでありながらリピート率20%という数字の背景でもあるだろう。
 「ななつ星 in 九州」は第1回日本サービス大賞内閣総理大臣賞を受賞した。「苦労が報われたという思いと、サービスの質を絶対に落とすわけにはいかないという緊張感に包まれています」という。「ななつ星 in 九州は唯一無二の列車です。JR九州では、唐池社長の時代からデザイン&ストーリー(D&S)というコンセプトで様々な列車を企画し走らせてきました。その集大成が「ななつ星 in 九州」であり、さらに他のD&S列車にも生かされていくことになると思います」

おもてなし

「これまでに経験したことのない旅をご提供します」

 明治時代、まだ地方私鉄であった九州鉄道は豪華寝台列車を企画し、米国の鉄道車両メーカーに発注までした。しかし、車両が完成し輸入されたときは、九州鉄道はその他の地方の有力私鉄とともに統合・国有化され、豪華列車が定期運転されることはなかった。「或る列車」という名称で呼ばれる知る人ぞ知る存在。JR九州はこの名称を引き継いで、気動車を豪華列車に改装したスイートトレイン「或る列車」として2015年8月から運行を開始した。豪華な内装は「ななつ星 in 九州」譲り。DNAは確実に受け継がれていく。
 「ななつ星 in 九州」の成功を受けて、JR東日本はクルーズトレイン「トランスイート四季島」を2017年5月に運行開始する。JR西日本も17年春から「トワイライトエクスプレス瑞風」を運行予定である。仲氏のところにはJR東日本やJR西日本の担当者が技術系から営業系、企画部門を含め多くが訪れてきたという。

 「日本中でそうしたクルーズトレインが走り出したら、また新たな市場が開拓できます」と仲氏は期待を寄せる。この流れを受けて、JR東日本とJR西日本、JR九州の3社で世界に向けて共同イベントを行いたいとしている。
 最後に仲氏は「ななつ星 in 九州」の未来について、次のように締めくくった。
 「これからも先駆者として、『ななつ星 in 九州』は挑戦を続ける列車であり続けたいですね」

プロフィール

仲 義雄(なか・よしお)氏

九州旅客鉄道株式会社
鉄道事業本部クルーズトレイン本部
次長

プロフィール

(撮影:林田 大輔)
【監修:株式会社日経BPコンサルティング】
記事中の意見・見解はNECフィールディング株式会社のそれとは必ずしも合致するものではありません。