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2016年8月30日第1回 九州旅客鉄道株式会社

内装から食器まで
九州の工芸技術を採用

 九州の風土に合った、つまり九州らしさをふんだんに盛り込んだ列車。それが「ななつ星 in 九州」の核をなすコンセプトになった。例えば、列車の内装には九州各地の工芸品や木工技術をふんだんに使っている。有田焼(佐賀県)を代表する名窯である柿右衛門、今右衛門、源右衛門による磁器の洗面鉢やランプシェードであったり、木工業が盛んな大川(福岡県)の組子細工で壁を飾るなど、九州を印象付ける素材が選ばれた。また、車内で使われるティーカップや食器は同じく有田焼の窯元である中村清吾氏の手による。
 車両製作に関わった車両メーカーやJR九州の車両工場のスタッフも「日本一の豪華列車を創る」との思いを共有した。スケジュールやデザイン上の制約など、難題が山積していたにもかかわらず、それらを粘り強く解決していった。

食器の一つひとつにもこだわる。

 そのプライドは、客車の等級表示にさりげなく込められている。客車の等級は通常は「イ」「ロ」「ハ」で表される。「ハ」はかつての三等車で現在の普通車。グリーン車は二等車の「ロ」。一等車は「イ」だが、太平洋戦争後、「イ」を持つ車両はほとんど製造されてこなかった。「ななつ星 in 九州」の車両は、車両重量区分で重い方から2番目の「マ」と1等車の「イ」、そして寝台車を表す「ネ」を組み合わせた「マイネ」という形式名が使われている。歴史から消えていた「イ」を復活させたことは、技術者達が「一番」にこだわった証拠だろう。

人と人の出会いをもたらし
九州各地で歓迎の輪が広がる

 「これまでに経験したことのない旅」をめざした「ななつ星 in 九州」。旅の始まりはJR博多駅にある専用のラウンジ「金星」から始まる。
 乗客は乗車前に「金星」に集まり、ウェルカムドリンクなどのサービスを受ける。そのとき、JR九州の社長が乗客一人ひとりに挨拶して回る。現在の青柳俊彦社長も、3泊4日コースの出発日である火曜の午前中、役員会を終えて駆け付ける。そして、発車の時はプラットホームに立って手を振り続け出発を見送る。「無事に帰ってきてほしい」という願いを込めて、経営トップ自ら「ななつ星 in 九州」が見えなくなるまで手を振り続ける。たまたまプラットホームに居合わせた他の列車の乗降客も「ななつ星 in 九州」の出発を見送ることになる。これが乗客にとって最初の感動となる。
 列車が久留米と大分を結ぶ久大本線に入り、うきは市に差しかかると、子どもたちが沿線で手を振っている。 「こちらからお願いしたわけではないのですが、列車が通るたびに、うきは市にある山春保育所の子どもたちが毎回手を振ってくれているんです。あるとき、それにクルーが気づいて、その保育所にお礼にうかがいました。それがご縁で、卒園式におじゃましたり、クリスマスの時期にはクルーがサンタクロースの姿で訪問したりするようになりました」
 その後のダイヤ改正では、山春保育所の子どもたちの前は徐行して通ることにした。沿線の子どもたちと乗客が手を振り合う。何気ない人と人との触れ合いが、旅の感動を盛り上げてくれる。
 もう一つエピソードを紹介しよう。「鹿児島県の姶良市では、運行開始当初、ある橋の上でおじいさんが列車に向けて小さな旗を振って歓迎してくれました。その後、旗が少しずつ大きくなり、やがて大漁旗が振られるようになったのです。しかも地元の高校生まで参加するようになり、毎回その橋のあたりは大変なことになっています」(笑)
 このように、「ななつ星 in 九州」を通じて、九州各地で人の輪が広がっている。仲氏は、「ななつ星 in 九州」が九州の人たちに歓迎されている、という思いを強くしている。

手を振る人たち

写真提供:九州旅客鉄道株式会社