2018年10月18日 第9回【前編】筑波大学大学院システム情報系教授/
サイバーダイン株式会社代表取締役社長・CEO 山海嘉之氏
The Game Changer
試合の流れを一気に変える人--ゲームチェンジャー。
物事の流れを根底から覆し、人々の暮らしや社会、企業活動などに変革をもたらす……。
歴史のダイナミズムとは、そのようなゲームチェンジャーたちによる挑戦の結果によるものかもしれません。
現代社会を揺り動かすゲームチェンジャーとはどのような人たちなのか。
変革をもたらす視点、独自の手法、ゴール設定、モチベーションをいかに維持するか等々、変革に挑戦した者だけが語ることができる物語を紹介します。
社会に変革をもたらす
少子高齢化や人口減少といった社会環境の変化に我々は直面しており、それらに起因する様々な課題が浮かび上がっている。そんな中、その解決にAI(人工知能)やIoT、ロボティクスなどの技術を使う動きが広がっている。サイバーダイン株式会社は、AIやIoH/IoT*1の技術を生かした医療・介護用ロボット「HAL®」(Hybrid Assistive Limb®)を研究開発、製造する。同社のCEOで筑波大学大学院システム情報系教授でもある山海嘉之氏に、ロボット開発のきっかけから未来のあるべき姿まで、その思いを聞いた。
*1 IoH/IoT(Internet of Humans / Internet of Things)は、山海氏が提唱するこれからのビッグデータの要となるヒトとモノのインターネットのこと。
“○○博士”になりたかった
――――ロボットに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。
山海 9歳のときに風邪で寝込んだことがあって、母が何冊かSF小説を買ってきてくれました。その中にアイザック・アシモフの『われはロボット』(原題:I, Robot、1950年刊)がありました。 |
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――――9歳で将来を決めたというわけですね。
山海 いわゆる科学少年でしたが、そのころから物理や化学、生物などあらゆる分野に関心がありました。教科書に載っているような実験や、それ以外でもできそうな実験は一通り経験しましたし、その原理を知り、原理と原理を組み合わせるとどうなるのか、などということも考えていました。毎日何時間も遊ぶ感覚で楽しい時を過ごしていました。
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当時は、インターネット社会の今と違って、出版のスピードに比べて科学技術の進歩がかなり速かった。本に載っている電子回路を真似しながら作ろうと思って部品を買いに行くと、その部品はすでに廃番になっていて、パーツ屋さんで扱っていないのです。「代わりにこれでどうかなぁ?」と渡された部品を使うと、ちゃんと動く。そのとき、原理が大切なんだと気づき、それ以降は、原理と原理を組み合わせるというような遊びに切り替わっていきました。全く違う分野の原理と原理を頭の中で組み合わせてみて、これは面白いかもしれないと思ったらすぐに実験で確かめてみるようなことを遊び感覚でやり続けてきました。 |