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2017年7月13日第5回 株式会社 hapi-robo st 富田直美氏

人を楽にすることは、人から創造力を奪うこと

--IoT、AI、ロボットがブームになっています。製造業もサービス企業もキャッチアップに必死です。

富田 車の自動運転も話題ですね。でも本当にそれが人の幸せにつながりますか。私は少なくとも運転したい。車で移動中も仕事をしなければならないほど忙しい人はどのくらいいるんでしょうか。
 ただ、ドライバーが運転中に意識を失った場合を想定したフェイルセーフティー技術なら歓迎です。
 大手ECサイトが構想中のドローン配達に批判的と先ほどもいいました。東京の空を何千というドローンが飛び交う様子を想像してみてください。ちょっと異常な光景です。
 最近はIoTやAIのイベントが花盛り、私も講演をする機会があります。私は冒頭でいきなり「IoTはダメだ」と言い放つんです。聴衆はビックリしますよね。ヒントを得ようと来ている企業関係者もビックリですよ。
 なんでもインターネットでつながる社会とは、どのような社会なのでしょうか。例えば自分が着ている衣服にもチップが埋め込まれて、常時ネットワークにつながっている……。想像してみてください、それが幸せですか。私は嫌ですね。そんな衣服を私は着ない。しかし、まだ誰も深く考えていない。“とにかくつながる、生産性が高まる”という一面しか見ていない。

富田氏写真3

 “IoTで人々の生活が便利になり、楽になる”という。しかし、人を楽にすることが人を幸せにすることにはつながらない。人を楽にするとは、人から創造力を奪ってしまうことです。結局、今の状況は、ベストプラクティスを集めてコピペすることに汲々としているだけ。自分の幸せは自分でしかわからない。他人のベストプラクティスは、あくまでも他人の幸せでしかないんです。

--それでも技術革新は続きます。AIは人の能力を超える、いわゆるシンギュラリティー(技術的特異点)の時がくるともいわれています。ロボットも人を超えていくのでしょうか。

富田 人の五感を超えるセンサーは技術的に不可能、というのが私の持論です。一つ一つの要素ならば、人よりも高い能力を持ったセンサーは存在しますし、人が感知できないこともセンサーならばできることも多い。しかし五感を働かせて統合的に対応することは難しいでしょうね。アルファ碁のように、ソフトが囲碁の名人を打ち破るのは、囲碁の打ち手を全部知っていて、膨大なデータを瞬間的に処理する能力があるからです。ただそれだけに過ぎません。
 シンギュラリティーという言葉は多くの人が知るようになりましたが、私はマルチラリティーにも注目しています。世界最高のソロ演奏家を集めてオーケストラを編成しても、演奏はまとまりがつかないでしょう。大事なのはそれをまとめるコンポーザーです。一つひとつの要素が人の能力を超えても、完全に超えるためには、複数の要素が絡み合い、組み合わされなければなりません。
 一方で、人は、相手の口調や表情から、相手がどういう状況にあるかを推測するといったことを日常的に行っています。それも意識的にではなく無意識に行っています。これも五感を働かせて自然に表情や行動に出せるということです。人はすごい潜在能力を持っているのです。その能力を引き出せた時が、一番幸せを感じる時なんだと思います。
 その点で、CPUメーカーのインテルがセンサー事業に重点を置くというのは正しい選択といえます。ちなみに、インテルはLEDを搭載したドローンを数百機も飛ばすドローン・ライトショーを世界各地で行っています。ハウステンボスでもこのショーを見せてくれることになっていますので(2017年7月22日から8月5日まで)、もし機会があれば体験してみてください。

プロフィール

富田 直美(とみた・なおみ)氏

株式会社 hapi-robo st 代表取締役社長
ハウステンボス取締役CTO
H・I・S取締役CIO

1948年生まれ。祖父はバプテスト派の牧師、父は哲学者で教師、津田塾大学で学んだ母という環境で育つ。幼少期は洋風の生活の中で「卵ではなくエッグでもなくイー・ジー・ジーと覚えさせられた。かなり変わった少年だった」と笑う。外資系IT企業の社長を多数歴任。日本総研理事などを経てハウステンボスの子会社として2016年7月hapi-robo st設立。

富田氏写真プロフィール

(撮影:清水タケシ)
【監修:株式会社日経BPコンサルティング】
記事中の意見・見解はNECフィールディング株式会社のそれとは必ずしも合致するものではありません。