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2016年9月29日第2回 株式会社ベンチャーウイスキー 社長 肥土伊知郎氏

--肥土さんの夢を教えてください。

肥土 秩父蒸溜所で仕込んだ30年物のシングルモルトを飲むことです。私が70歳を少し越えたくらいにできるので、健康でいられれば飲めるだろうと思っています。取引先や支援してくれている人たちを集めて皆で飲みたいですね。どんな風味になっているか、期待と不安があると思いますけど。  もう一つの楽しみは、長女が18歳で、あと2年もすればお酒が飲めるようになること。最初からアルコール度数の高いシングルモルトというわけにはいかないでしょうが、お酒を楽しめるようになるといいですよね。先日もちょっと聞いてみたのですが、まだ飲んだこともないのでウイスキー造りには興味がないようです。まあ、私も最初は実家を継ぐどころか、どうしたら継がないで済ませられるかばかり考えていましたが。いずれ長女がベンチャーウイスキーを継いでくれれば、それは嬉しいのですが……。本人の考え次第ですね。幸いウイスキー造りが好きな若者が集まってきましたし。  日本でも小さな蒸溜所がいくつか計画され、実際に今年から事業をスタートさせる蒸溜所もあります。スコットランドには、かつては3人くらいでウイスキーを造っていた蒸溜所があり、それを東京で飲むこともできます。私がベンチャーウイスキーを作った時、いつかは地球の裏側でも私が造ったウイスキーを楽しんでもらいたいと思いました。  ベンチャーウイスキーもそうですが、日本でも小さな蒸溜所ができて、それぞれに個性のあるウイスキーが登場したらおもしろいと思うんですよ。スタートしたばかりの小規模の蒸溜所が、大メーカーでは造れないウイスキーを造り、様々なウイスキーが市場に出ることで日本のウイスキー文化がさらに深みを増していくと期待しています。  ウイスキー造りは一代の仕事ではありません。私も先代までが仕込んでくれたウイスキーを売ることからベンチャーウイスキーをスタートさせました。先代が仕込んで、次の代が売るというのは普通のことなんです。もっと長いスパンで考えれば、樽に使うオークの木などは、何十年、何百年と育った木を使っています。その樽の成分が滲み込んでいると考えれば、長い年月かけて育った生命が凝縮されているともいえるのではないでしょうか。

◆取材を終えて◆
肥土社長が語る
シングルモルトを楽しむワンポイント

 静かな語り口ながらウイスキー造りへの情熱がひしひしと伝わってくる肥土社長。ウイスキー造りの大変さや、ウイスキーの深い魅力にあらためて気づかされた取材でした。取材の最後に、肥土社長おすすめのウイスキーの飲み方を教えていただきました。  「私の場合、まず香りを楽しみ、一口含んで味を楽しみます。そしてチェイサーで口をリフレッシュして、また味を楽しむ。そういうスタイルです。半分ほど飲んだら、ほんのちょっとだけ水を加えるのもおすすめです。そうするとフワッと香りが立ってくるんです」   ウイスキーの素敵な飲み方を教わりましたので、今度はぜひバーで実践したいと思います。(編集部)

プロフィール

肥土伊知郎(あくと・いちろう)氏

株式会社ベンチャーウイスキー社長

1965年生まれ。実家は祖父が設立した東亜酒造。東京農業大学醸造学科卒業後サントリー入社。その後東亜酒造に入社するが、経営破綻で事業譲渡。2004年にベンチャーウイスキーを設立し、東亜酒造に残された原酒から作ったウイスキーの販売をスタート。2007年秩父蒸溜所が完成。同社の「イチローズ・モルト」は「ワールド・ウイスキー・アワード2007」でベスト・ジャパニーズ・シングルモルトに選ばれた。

(撮影:清水タケシ)
【監修:株式会社日経BPコンサルティング】
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