2021年4月6日

 

食品ロスとは?食品ロスの現状の問題と社会のために企業が行うべき対策

食品ロスとは?食品ロスの現状と社会のために企業が行うべき対策

スーパーやコンビニ、ファストフード店、レストランなど、現代ではあらゆるところで食べ物を買い、食べることができます。しかし、このように食べ物があふれている反面、近年では食品ロスが問題になっています。
この食品ロスとはどのような状態を指しているのでしょうか。

今回は、食品ロスの現状や、食品を提供する企業が社会のために行うべき対策などについて紹介します。

食品ロスとは

食品ロスとは

食品ロスとは、本来ならば飲食によって消費できるにもかかわらず、捨てられてしまう食品のことです。
食品ロスの理由はさまざまですが、例としては、野菜などの可食部分を皮などと一緒に捨ててしまう過剰除去や、賞味期限切れ・消費期限切れによる直接廃棄、単純な食べ残しなどがあります。

食べられるはずの食品が廃棄される食品ロスは「もったいない」だけではなく、廃棄の過程で焼却を行うことになるため、二酸化炭素の排出などにより環境にも悪影響を与えます。

食品ロスの現状

食品ロスの現状を知るには、農林水産省が発表している「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」という資料が役に立ちます。
農林水産省のデータによると、日本では1年でおよそ2,550万tもの食品廃棄物が生じていて、そのうち食品ロスはおよそ612万tです。
食品ロスの内訳としては、事業系食品ロスが328万t、家庭系食品ロスが284万tという推計になっています。この数字を国民1人当たりの食品ロス量に換算すると、1日約132g、年間では約48kgに相当します。これは国民1人当たりの年間のコメ消費量(約54kg)にも迫る数値です。

出典:林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」

また、食品ロスは2015年に国際連合で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に定められた「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットにもなっているなど、グローバルな視点からも近年関心が高まっているトピックです。

食品ロスによって何が起こるか

食品ロスによって何が起こるか

では食品ロスが大量に発生することで、具体的にどのような問題が起きるのでしょうか?
食品ロスによって次のような事態が加速することになります。

ゴミ処理のコスト増大

食品ロスが原因で行き場を失った大量の食品は、焼却処分されることになります。
食品ロスが増えることで、廃棄の運搬にかかる費用などを含め、焼却コストが大きくなります。また、焼却処理をすることで、地球温暖化の要因ともいえる二酸化炭素の発生や、焼却灰の埋め立て処理などにより、環境への負荷も大きなものとなります。

経済的損失

食品を製造するためには、原料費のほか製造機器を動かすための経費などさまざまなコストが必要です。製造担当者などの人件費も必要になるため、1つの商品を作るためには多大なるコストがかかっています。しかし、食品ロスとして廃棄されてしまえば、製造された食品だけではなく、人件費などの経費もすべて無駄になってしまいます。

特に、日本では食料自給率が問題となっており、食糧自給率を高めるためにさまざまな工夫がなされていますが、多くの食品を輸入に頼っているのが現状です。食品製造のために輸入された原材料が食品ロスとして廃棄されている可能性も否めないため、経済の観点でも矛盾や無駄が生じています。

また、世界では9人に1人が食糧問題による栄養不足に陥っているとされています。十分な食事ができずに困っている人がいるなか、日本人1人が1年で48kgもの食品ロスを起こしている事実を考えると、食品ロスに関して社会的な意義も考えていかなければならないでしょう。

食品ロス削減に関する目標

食品ロス削減に関する目標

食品リサイクル法では食品廃棄物等について以下のような基本方針を定め、食品関連事業者による取り組みを推進しています。

  • 1.発生抑制と減量化による最終処分量の減少
  • 2.飼料や肥料等への利用、熱回収等の再生利用

食品ロス削減に関する取り組みのなかでも重要視しているのが「発生抑制」です。あらかじめ食品廃棄物の発生を抑えることが、食品ロスを減らすための最優先事項と位置付けています。食品リサイクル法では、食品ロスの削減目標として、事業系食品ロスの量を2030年までに、2000年度の食品ロスの量と比較して半分以下になるよう削減することを目標にしています。また、事業者については業種別に発生抑制の目標(基準発生原単位)を設定し、食品廃棄物の発生原単位が基準発生原単位以下になるよう努力することが盛り込まれています。

食品の製造・加工過程、流通過程、販売過程、調理・食事の提供過程など、さまざまな食品関連事業者が連携して食品ロス削減に向けた取り組みを促す方針となっています。食品ロスの抑制に取り組むなかで発生してしまった食品廃棄物については、リサイクルをするなどして再利用を推進しています。

食品ロス削減につながる対策

食品ロスによって何が起こるか

食品ロスの発生量を、2030年までに2000年度の半分以下まで削減するために、どのような対策を行う必要があるのでしょうか。

商慣習の見直し

食品メーカーと小売店との商慣習で「3分の1ルール」というものがあります。賞味期限が3ヵ月の商品であれば、その3分の1の期日である1ヵ月以内に小売店に納品しなければならないというものです。

3分の1の期間を過ぎてしまった商品は店頭に並ぶことはなく、返品や廃棄のルートをたどります。3分の1ルールをなくし、賞味期限以内で広く販売することが求められています。

賞味期限の延長など

パッケージングの工夫などにより保存性を高めることで、賞味期限を延長させることも可能です。また、これまでは「製造日から3ヵ月後」というような賞味期限の表示も、「○年○月」という表示のみにし、日にちの猶予を持たせるように工夫を行っている企業もあります。

食べきり運動の推進

ファミリーレストランなどでは、ハーフサイズやミニサイズといった食べきりサイズの商品展開などを検討し、食べ残しがないようにする努力が求められています。また、食べ残しに対して持ち帰るための容器を導入することなども食品ロスの削減につながります。

フードバンク活動の活用

近年、子どもたちの居場所づくりの一環として始められた「子ども食堂」が増えています。
子どもたちが食べる温かい食事やフードバンク活動で提供される食品は、フードロスで生まれた食品を活用しています。賞味期限内に販売できないと判断された食材を寄付することで、食品を無駄にすることもなり、食料を必要としている人々に食品を届けることができます。

ゴミを減らす取り組み

食品ロスの量には食品内の多くの水分も含まれています。水分を多く含む食品は焼却処理の燃料代も余計にかかりコストがかさむ原因にもなるうえ、二酸化炭素を大量に発生させる要因にもなります。
食品自体の廃棄量をすぐには変えられなくても、食品の水分をできるだけなくすだけで食品ロスの削減に大きく貢献できるのです。

生ゴミを乾燥させて量を減らすためには、専用の乾燥機やバイオの力で生ゴミの生分解を行える生ゴミ処理機の導入が推奨されています。

おわりに

食品ロスは今や日本だけではなく、国際的にも関心が高いトピックの1つです。

大量の食品ロスは、単にもったいないということだけではなく、経済的損失や環境負荷などの経済的・社会的な問題の発生にもつながります。

食品ロスを削減するためには、食品を扱う企業が率先して具体的かつ実現性のある方法に取り組み、社会全体の食品ロスを減らすための対策を講じるべきだといえるでしょう。

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