2019年12月10日
製造業のサービス化とは。求められるソリューション
開発力や生産性は、製造業にとって中核となる重要な要素です。しかしながら近年では、「良い製品を作れば売れる時代は終わった」「ユーザの消費スタイルがモノからコトへ変化している」と言われています。
製造業としてのものづくりの重要性が下がったわけではありませんが、多くの商品が流通するようになり、「もの」にプラスアルファした付加価値が差別化要因として価値を高めているのは間違いなさそうです。
製造業のサービス化の考え方
ユーザの消費スタイルは近年、商品の所有に対して価値を見いだす「モノ」から、体験などに価値を見いだす「コト」へと変化しています。この変化により、製造業にも「サービス化」という考え方が浸透しつつあります。つまり「製造業のサービス化」とは、メーカが生産している製品に対して「サービス」という概念を付加していくという意味になります。これまで製造業では、モノを作って売るまでで終わりでした。コトを含めたビジネスを展開することで、これまでの価値観が大きく変わっていくわけです。
モノにサービスを付加するにあたってはICTが欠かせません。とくにIoTは重要なキーワードとなっており、IoT活用のアイデア次第ではビジネスの幅をさらに広げていくことができるでしょう。
製品のサービス化が加速する背景
製造業の世界では、「モノをつくって消費者に購入してもらう」という業態が長年続いていました。しかし近年では、たいていの製品のコモディティ化が進んでいます。その結果、どの製品も他製品との機能の差がなくなりつつあり、競合製品との差別化に苦しむようになってきました。
そこで最近では、定額料金を月ごと(あるいは年ごと)に支払うことで、製品やサービスを一定期間利用することができるビジネスモデルである「サブスクリプション」が浸透しつつあります。
サブスクリプションと聞くと、映画や音楽、雑誌、服、車といったBtoCサービスが頭に浮かぶかもしれません。しかし、Officeアプリケーションを月々定額で利用できるMicrosoft社の「Office 365」や、クリエイティブアプリケーションを月々定額で利用できるアドビ社の「Adobe Creative Cloud」、会計ソフトや給与計算ソフトなどを月々定額で利用できるfreee社の「freee」など、ビジネスシーンでもサブスクリプションモデルが広がりつつあります。
また、製品の売り切りではなく、販売後も顧客から継続的に収益を上げていくビジネスモデルである「リカーリング」も製品のサービス化と言えます。このリカーリングの代表としてプリンタや複合機のビジネスモデルが挙げられます。プリンタや複合機は買った後もインクなどの消耗品や保守メンテナンスは必要になりますので、それらを提供することで収益を上げていくというわけです。
製品のサービス化により変化してきたこと
このような新たなサービスの隆盛に代表されるように、消費者はモノを所有することに価値を見出さなくなりつつあると言えます。現代の消費者にとっては「モノ=高額なコストをかけて所有するもの」というのではなく、「モノ=必要なときに必要なところだけ利用できれば良いもの」に変わりつつあるのです。
そこで製造業は製品をつくって販売するだけではなく、サービスを付加することで製品の価値を高め、必要な価値を必要なときに提供するという業態にシフトしています。このような状況を背景として、製品のサービス化が加速しているわけです。
製品の機能的価値をサービス化するのではなく、顧客が製品を使用する際に生じる体験価値や使用価値をサービスとして提供するケースも増えています。代表例として、モノの利用シーンを創り出し、最適な活用方法をソリューションとして提案するサービスや、モノの利用状況をモニタリングし、メンテナンスするサービスの提供が挙げられます。
製造業の現場力をサービスとして提供している製造受託開発(EMS)の場合は、新興国メーカにはできない企画・生産設計など領域も含めた提案を行い、付加価値を高めているのが特長です。
製造業に求められるサービス
製造業の製品のコアとなるのは製品そのものであることに変わりはありません。一方、サービスという言葉は、形ある「もの」=「製品」に対して形の無い「価値」を表しています。そこで近年では、製品そのものではなく、製品を通した「体験」=「サービス」を提供すると言う考え方が広まってきました。
製品の機能では無く、製品を利用した際の体験にフォーカスした製品づくりの例としては、iPhoneの例が広く知られています。
ユーザ体験の質
iPhoneの例では、多機能な携帯電話が従来製品と比べて飛躍的に便利に扱え、ストレスなく使えるという体験がユーザの高い評価につながりました。
iPhoneの例に限らず、ユーザ体験の品質向上には、扱う製品によってさまざまなタイプがあります。
- ・直感的に使える
- ・手間なく使える
- ・早い
- ・軽い
- ・入手しやすい
- ・保存しやすい
など、製品の目的や、使用するシーンにより、ユーザに評価される体験の質が異なります。
一方、どんな製品にも共通し、かつ日本企業が得意とされるサービスもあります。
どの製品にも共通するアフターサービスの価値
製造業の悩みの種となることもあるアフターサービスですが、ユーザにとっては価値が高く、製品の種類によらず一定の価値を持つサービスです。
アフターサービスを強化するメリットとしては、顧客のクレームや要望は、製品品質改善への重要な情報となる事があげられます。また、一つのクレームの背後には、声を発しない不満を持ったユーザが隠れていると言う事実も忘れてはなりません。
自社の製品に対する期待の裏返しがクレームとなって表れていると言う捉え方ができれば、アフターサービスを自社製品の競争力を高める武器として活用できます。
アフターサービスの高度化
NECフィールディングは、多くの製造業に対して付加価値を与えられるアフターサービスソリューションを提供しています。
まとめ
製造業が製品や企業そのものの価値を高めるために、製品だけを見ているわけにはいきません。差別化や高付加価値化のためには製品を取り巻くサービスの拡充も必要です。