2018年5月25日第7回 スマートスピーカー
日常生活に登場した大型新人の衝撃
音を出すだけではなく、音声による操作で様々な機能をアシストする「スマートスピーカー」が登場している。AI(人工知能)によって機能が大幅にアップしているので「AIスピーカー」とも呼ばれている。声をかけるだけでシステムや各種機器に指示を出せる、応用範囲の広いニューヒーローである。これまでパソコンやスマホが使えないと次々に現れる便利な機能を利用できないことが多かったが、そうした機器が苦手の年配者でも言葉を発するだけでシステムに指示が出せる。また、仕事などで両手がふさがっていても声だけでいろいろな機器に指示が出せる。生活スタイルが一変しそうだ。
「音声入力」はすでに一部で急速に普及してきた。しかし、入力を受け付けるにはパソコンやスマホが必要だった。このスマートスピーカーはパソコンやスマホを用意する必要がない。スピーカーに声で指示を出すと、インターネットにつながってリクエストに応えてくれる。「開けゴマ」と発すればドアが開くどころか、命令次第でいろいろなことをしてくれる。
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また、スマートスピーカーの大きな特徴が、いろいろな機器と結び付いて指示を実行できる点だ。掃除機への部屋の清掃の指示、照明器具の点灯や消灯、テレビやエアコンのスイッチ、スマート冷蔵庫の中にある食材から料理できる候補のメニューの検索、不足する食材のショッピング指示など、家庭生活のスマート化(高度情報利用)が進展する。 |
(Illustration : Saho Ogirima)
これまでインターネットでできるようになった情報収集はすべてスマートスピーカーで利用できるようになると考えてよい。裏側ではAIが働いて高速で情報処理してくれる。
アマゾンやグーグルなどのAIメーカーをはじめ、中国の検索サービス会社などが製品を一斉に売り出している。形状は普通の音響スピーカーを小型にしたものや表示画面付きのもの、カメラ付きのものなど多様だが、今後はさらにファッション性に富んだものも登場するだろう。
スマホと同様にアプリを追加すれば様々な機能を利用することができる。
外国人乗客を乗せたタクシー運転手が日本語で話しかければ、スマートスピーカーがクラウドの機能を呼び出し、乗客に合わせた言語に翻訳して伝えてくれ、その応答も後部座席に置いたスマートスピーカーを通じて日本語で返ってくる、という仕組みも考えられる。この1つの例示でも豊富な可能性がイメージできる。
もっとも、こうした便利な機能はサイバー攻撃には弱みも見せる。便利さの追求とともにセキュリティにも十分な配慮が必要だ。
文=中島 洋[Nakajima Hiroshi]
株式会社MM総研 代表取締役所長
1947年生まれ。日本経済新聞社でハイテク分野などを担当。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)では『日経コンピュータ』『日経パソコン』の創刊に関わる。2003年、MM総研の代表取締役所長に就任。