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2017年5月12日第4回 LPWA

低消費電力で広域をカバー
IoT時代の救世主になるか

 英文字の略字が多い情報通信の世界に新参の略語「LPWA」が登場した。IoT時代進展のネックを解消する無線の新技術である。ローパワー(LP)、つまり低消費電力で広い地域をカバーできる無線(ワイドエリア=WA)である。無数の機器やセンサーからデータを集約するIoTでは、個々の機器の電源確保が難点だが、その問題に道を開く。
 IoTはあらゆるモノをインターネットに接続して必要なデータを集約する。深い知見を得るためのビッグデータ収集はもちろん、機器類の効果的な自動連携(代表的なのが自動車の無人運転)など、幅広く社会革命を引き起こすものとして期待されている。さらに遠隔地から機器類の稼働データを収集して最適なタイミングで保守するための道具としても注目される。。
 ただ、インターネットに接続させる機器やセンサーが膨大になると、全体としてデータを送るためのコストや電源確保が課題になってくる。

 LPWA

 LPWA技術のポイントの1つは、利用する周波数帯が極めて狭い(ナローバンド)ことである。
欧州で急速に普及しているSIGFOX(シグフォックス)社の場合で1メッセージ当たり100Hzという狭さである。映像など大容量の通信をするブロードバンドとは対極である。毎秒100ビットの速度しかない。その分、コストが安い。さらに、利用周波数は1GHz近い高周波数領域なので、狭帯域のチャンネルを多数確保でき、さらに見通しが良ければ長距離まで届くのが特色である。1つの基地局で広範囲の機器、センサーを運用できる。その結果、運用コストも大幅に抑え込めるのである。
 これはIoTで利用するデータの性格にぴったりである。

(Illustration : Saho Ogirima)

 IoTでは無数の機器やセンサーからデータを集めるが、その個々のデータの規模は小さい。また、必ずしもリアルタイム性を要求しないので、必要な時に基地局の側からリクエストした時だけ送信すればよい。それ以外は電源を切っておけるので、電気を節約できる。
 欧州や米国では新興企業が独自のネットワークを構築してサービスを開始しているが、安いもので利用料金は1回線、年間1ドル程度という低料金である。在来の3G回線やLTEでは数量割引などの交渉をしても1回線当たり年間40ドルや50ドルは必要だろう。在来の無線通信会社も、成長分野であるIoTの市場を確保するため、共同で規格を標準化し、LPWAサービスに参入する動きを見せ始めている。
 スマートハウス、スマートオフィス、スマートタウンなどで、さまざまなモノがインターネットに接続される時代。家電製品、情報機器・事務機器群、工場内の製造機械、鉄道や自動車・建設機械などが従来以上の保守点検が必要だ。定期的に稼働状況のデータを集めなければならない。在来方式ではデータの収集に多額の経費がかかる。しかし、LPWAサービスが普及すれば、新しい保守サービスの形に変化していく。
 注目しなければならない新技術である。

文=中島 洋[Nakajima Hiroshi]

株式会社MM総研 代表取締役所長
1947年生まれ。日本経済新聞社でハイテク分野などを担当。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)では『日経コンピュータ』『日経パソコン』の創刊に関わる。2003年、MM総研の代表取締役所長に就任。

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