2017年11月8日第5回 密漁監視システム
監視センターで運用をサポート
機械学習は、大量のデータを集めて学習を行う。いわゆる“育てて”いかなければならない。「実はどう育てるかが難しいのです」と深津マネージャーは話す。
カメラが捉えた船の画像を学習させていき、その学習内容から密漁船をあぶりだす。「密漁船は滅多に出てきません。一番難しいのは、これが密漁船だ、というデータを覚え込ませることができない点」と金子エキスパート。それでも「地元の漁協と協力して地道に画像を収集し、機械に学習させることで精度を高めています」と、金子エキスパートは継続してAIの育成を図っていくと話している。
「ナマコ密漁監視システム」は、陸奥湾の各漁協に配置した15台の監視カメラをネットワークで結び、監視用のサーバ、24時間監視の画像を蓄積するストレージ、そして画像解析用のサーバで構成されている。また、監視カメラの画像は各漁協でモニタリングできる。船影を捉えると、機械学習による判定結果も含め複数の情報から総合的に不審船かどうかを判定し、密漁船の可能性があると各漁協の担当者あてに監視情報を自動的にメール配信する。 |
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最小構成の価格は1500万円から
「ナマコ密漁監視システム」には地元の警察や海上保安部も関心を示しており、両者がシステムに加われば、さらに密漁の防止に効果があるだろう。大澤マネージャーは、「地元警察との連携については、これから提案していきます」と話す。「密漁監視システムを構築したことで、各漁協も喜んでいます」(大澤マネージャー)と、地域の関心も非常に高いと自信を示している。 |
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他地域の漁協からの見学希望も多数
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青森県漁連では、この監視システム完成直後にプレス向けの発表を行い、その現場を公開した。その際には「密漁監視システムを設置したことによる密漁の抑止効果をまず期待したい」と説明している。同漁連によれば、プレス発表後に県外の漁連や漁協から「見学したい」という問い合わせが数多く寄せられているという。それだけ密漁被害に頭を痛めている地域が多いといえる。密漁の検挙だけでなく、抑止力としても期待したいという漁業関係者は多そうだ。これまでは、監視カメラを設置しても、監視のために人手が多くかかるといった悩みが多かった。AIを活用することで、「人手をかけずに監視したいというニーズに合うはず」と、大澤マネージャーはソリューション化に手ごたえを感じている。 |
深津 祐幸(ふかつ ひろゆき)
ソリューション事業部
マーケティング戦略部
マネージャー
「妻の実家は漁師。実際に密漁被害に頭を痛めています」と、密漁監視システムの実用化が市場から期待されていることを社内の誰よりも実感している。「世界で一番のシステムを作る」という決意で陸奥湾のナマコ密漁監視システムの実現に奔走した。

金子 賢一(かねこ けんいち)
ソリューション事業部
マーケティング戦略部
エキスパート
「育て方を間違えるとAIもグレることがあります」と笑いながら話すAIのエキスパート。RAPIDの実用化について「NECグループのAI担当者からの期待も感じています」。先進的なシステムなので、保守に関わる青森支店の若手社員も興味津々なのがうれしいという。

大澤 悦弘(おおさわ よしひろ)
LCM事業部
東京システム部
マネージャー
ナマコ密漁監視システム構築でプジェクトマネージャーを務めた。開発段階では仙台の東北支社勤務で、青森と仙台を何度も往復した。「現地の漁協関係者から直接話を聞き、完成後に予想以上に喜んでもらえたことがいい経験になりました」と振り返る。

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※この記事は、当社発行の広報誌ふぃーるでぃんぐ137号に掲載したものです。
※記載されている役職等の情報につきましては、2017年8月8日時点のものです。
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