2016年6月15日災害対策関連サービス
東日本大震災の発生後、企業はBCP(事業継続計画)や災害対策を積極的に進めている。しかし、災害に対する備えの気持ちは、時の経過とともに薄れがちだ。震災から5年となる今年、もう一度災害対策を見直すことが大切だろう。
NECフィールディングでは、ITの保守サービスに加えて、太陽光発電システムや蓄電池、防災グッズの提供を通じて、企業のBCPと防災対策を支援している。
自治体の防災拠点向けに小中規模蓄電池を提案
NECフィールディングは、コンピュータやネットワークの設置から保守・運用の中で、電源設備の設計・施工なども手掛けてきた。そのノウハウを生かして、企業のBCP対策として提供しているのが太陽光発電システムや蓄電池だ。もともとNECグループでは、1996年にマンガン系リチウムイオン電池を、2000年にはラミネート型リチウムイオン蓄電池を開発しており、電気自動車(EV)用にそれらの技術が生かされている。そうしたニーズに加えて、「東日本大震災後、BCP対策として電源確保のニーズが急増しました。そこで非常用電源の事業を始めました」と、ソリューション事業部ファシリティソリューション部マネージャーの吉川隆稔は話す。
震災後、政府は「再生可能エネルギー等導入推進基金事業」(グリーンニューディール基金制度、GND)を創設した。これは地方自治体が防災拠点を設置する際の再生可能エネルギー導入を支援する制度。2011年度にスタートし、対象自治体に対して総額1,400億円の補助金交付を行う(2017年度まで)。これに対応し、NECフィールディングでは「自治体の防災拠点や避難所、消防署などに向けて蓄電池や太陽光発電システムの設置を提案している」という。
NECグループは、まず5・53キロワット/時の小型蓄電システムの提供から始め、その後、中型規模の15キロワット/時タイプも追加。小型の蓄電システムも7・8キロワット/時に容量をアップし、合わせて小型化・低価格化も実現している。さらにNECグループはNECエナジーソリューションズを米国に設立し、電力サプライヤー向けに大規模蓄電システム(GBS)事業も展開している。NECフィールディングでは2016年4月の電力小売りの完全自由化も見据えてユーザー開拓を進めてきた。
防災拠点や避難所向けに供給している蓄電池は、小型から中型のクラス。NECフィールディングでは、GNDに焦点を当て自治体を中心に提案活動を行っている。蓄電池ビジネスは競合も多いが、「NECフィールディングの強みは、設計から製造まで一貫して純国産のリチウムイオン蓄電池を活用していること。信頼性については高い評価をいただいています」(吉川)と自信を示す。災害時の非常用電源が主目的になるため、信頼性は最も重視される性能である。
蓄電池と太陽光パネルを組み合わせたソリューションも
自治体の防災拠点向けでは信頼性が第一。そこで、太陽光パネルは山形県天童市に本社があるエスパワー製のものを採用。塩害に強く、3メートルの積雪でも壊れない耐久性を誇る。「塩害に強いので、これまで太陽光発電には不向きとされていた沿岸部にも設置できます」(吉川)というのがポイント。このため「沖縄や島しょ部から引き合いが多い」という。塩害に対する強さは、国立研究開発法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が愛媛県や同社(エスパワー)などと協同で洋上太陽光発電の実証実験を行っていることでもわかる。
さらにNECフィールディングでは、2013年から太陽光発電システムの提供も始めている。これまでの実績は約80件で、「ほぼ計画通り」だという。BCPや災害対策としては、太陽光発電と蓄電池の組み合わせがベストで、しかも最も導入しやすい形態だという。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせた場合、電力の使い方はさまざまだ。昼間は太陽光発電で得た電力を通常通り使って余剰電力を蓄電池に充当し、夜間や停電時は蓄電池から電力供給を行う形や、日中でも太陽光発電と蓄電池の電力を調整して使用する形などがある。また、平常時には太陽光発電や蓄電池に加えて購入電力を使うケースも多い。「東日本大震災以来、大規模な災害は起きていませんが、停電などで蓄電池が稼働したケースはあります。災害時に必要な蓄電池の能力は12時間程度。その際には問題なく稼働しました」とシステムの安定性には太鼓判を押している。
また、エネルギーコストを抑えたい、地球環境を考慮したいということから、企業や家庭での蓄電池のニーズもある。NECフィールディングでは、小型蓄電システムの法人向け販売の際に、ITで培ったノウハウや保守体制を生かし、事業化することに成功した。
「蓄電池の導入を検討されているお客さまの状況確認や、ニーズを把握するためのコンサルティングを行って、最適なシステムを提供していきます」と、今後のBCPおよび災害対策の充実に向けて、さらに支援を強化していく方針だ。